読書感想③「はじめての哲学的思考」(苫野一徳)

 読書感想③

哲学者で教育分野の本も多く出版されている苫野さんの「はじめての哲学的思考」。

はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

 

 「哲学」と聞いても、古代ギリシャアリストテレスプラトンといった名前と堅苦しそうというイメージしかもっていない拙者であるが、

歴史を追いながら哲学がどのように人々の生活に関わってきたか、現代を生きていく上でどのように哲学が役に立つがわかりやすく、苫野氏の意見も交えながら解説されている。

 

特に勉強になったのは「哲学=共通了解を目指す思考」。

議論が硬直したり、主張がぶつかりあうとき、友達との何気ない会話でもそうであるが、「人それぞれの価値観、考え方がある」という結論というか着地になることはままある。確かに間違いはないし、人それぞれの価値観、考え方を尊重することはとても大切であるけれども、そのままでは決して問題は解決しないし、ましてや両者の関係はそれ以上発展しない。

このような状態を打開するのが、苫野氏も協調する「共通了解志向型思考」であり、妥協せず両者が納得できる第3のアイデアを生み出すための思考である。

お互いが自分の主張に自信をもっているのだから、”妥協せず”というところが非常に難しいのだが、その際にポイントになるのが、主張の背景にある根源的な欲望(=信念)に耳を傾けること。

 

”なぜそのような主張をするのか”

 

これを突き詰めていけば、相手の主張に思いを馳せることができ、譲り合うのではなく、お互いの主張の良い部分をミックスした第3のアイデアが生み出すことができる。

らしい。

 

自分に経験がないためまだ共感はできないが納得はできる。「お互いの価値観を認める」とは相手のそのまま放置することではなく、その背景を聞き、思いを馳せることであると思いなおした。

 

巷には、「ありのままの自分でいい」というメッセージを伝える書籍があふれているが、お互いに認め合うための営みとして哲学志向がいいかも!と思える内容だった。

”入門”と名前がついている通り、哲学に対する知識が全くない人でも全然大丈夫!な内容。