読書感想⑥「デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂」(落合陽一)

 昨今話題になっている落合陽一さんの新刊。

「デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂」(落合陽一)

難しいのを承知で読んでみました。

デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

 

 やっぱり難しいです。

一つ一つの用語の意味がわからないのと、抽象的な表現が多いため、用語の意味を的確に捉えていないと理解することが難しいんだと思います。

用語の難しさに関連して、人文、社会科学的の素養(例えば、侘寂の価値観とか)がないと理解することが難しい、かなり学術的な話になっています。

 

とはいえ、ほんとに意味がわからないところは読み飛ばしながらも、読破はしました。

落合さんの書籍を読むのは初めてだったため(一応、NeswPicksは使ってます)、「デジタルネイチャー」という表現に触れること自体初めてでしたが、どんな世界観なのかは自分なりに解釈ができました。

 

デジタルネイチャーとは

「高度に発達したテクノロジー環境によって、テクノロジーと自然の境界がなくなり、「自然=人間の手が加わっていない」という定義が崩れた状態の自然観」???なのかなと思います。「自然」「美意識」の拡大ということなのかな???

お分かりの通り、全然うまく言語化できません。再チャレンジしますが、、、

 

落合さんには自分には全然見えてない世界が見えている。新たなものの見方を提示している、創造している。

彼が「アーティスト」である意味がよくわかりました。

 

読書感想⑤「たゆたえども沈まず」(原田マハ)

2018年本屋大賞4位になった原田マハさんのアート小説「たゆたえども沈まず」

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

 

 「楽園のカンヴァス」を以前読んだことがあり気になっていた一冊。

ゴッホ兄弟の生涯について、実在した林忠正という画商と、この作品用に原田マハが登場させる架空の人物、加納重吉の視点から物語(史実に基づく部分もあるが、フィクション)が展開される。

 

ゴッホというと、

「下手くそ?」

「どうしてあんなに高いの?」

「何を書いているかよくわかならい」

・・・・・・

といったイメージを持たれている方も多いと思われる。拙者もそうです。

当時(19世紀末~20世紀初頭)の人々も同様です。

では、どうしてゴッホは現在のような評価を受けているのか

その答えは「芸術とは創造であり、これまでにないものを生み出す営みであり、ゴッホの作品が芸術であったから」だと思います。

大衆に迎合せず、命を芸術に注いだ男達の生き様に胸が熱くなるとともに、芸術に限らず、人間の営みには素敵な物語があることを感じさせてくれる素晴らしい作品だと思います。

少しボリュームはありますが(400P くらい)、とってもお勧めの一冊です。

 

読書感想④「デザインが日本を変えるー日本人の美意識を取り戻す」(前田育男)

マツダのデザイナー、前田育男さんの著書。

デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す (光文社新書)

デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す (光文社新書)

 

マーケティング関連の著書で昨今成功事例として取り上げられることが多いマツダのモノづくりの精神について、デザイン部署のトップにたつ前田氏の改革の取り組み、マツダの社風の観点から述べられている。

車を単なる移動”手段”としか見ていない拙者にとってはマツダの車は「ちょっとかっこいいな」くらいの印象であったが、車一台に込める想いや、日本車というアイデンティティにこだわる前田氏、マツダの物語が丹念に言語化されており、非常に読みやすく、随所で胸が熱くなる。

コンセプト「魂動」という言葉が導き出されるまでの過程や苦悩を知ると車好きでなくともとても惹かれる部分はあるし、今後もマツダの動向には注目していきたいと自然と思える。

また、高度経済成長を突っ走ってきた日本社会、日本人の意識には生産性、機能性を求めることが染みつき、デザイン、美意識が欠けてしまっている日本のものづくり、日本人の美意識そのものについても前田氏は警鐘を鳴らしている。グローバル化、国際競争力の低下が叫ばれる中、多様な価値観を認める、理解する人間が求められるが、まずは自国のアイデンティティ(文化、歴史、芸術とか?)をしっかりと理解、勉強、学ぶことが大切だなと腑に落ちた。人文って大切だとこの年になって何となく感じる…。

「日本人の美意識に基づいたモノづくり(簡素だからこその豊かさ)」

「職人=アーティスト」

前に取り上げた苫野さんの哲学思考だとか、芸術(アート)とは創造(=人をあっと言わせる、思わせるこれまでにないものを創ること)とか、すべて関連していることなんだなとつくづく感じる。面白い。

車、ものづくりに興味がなくとも、自分自身や自社のアイデンティティを見直すヒントが得られるし、普段何気なく目にしている車に込められたたくさんの人の想いに触れることができる、良著であると思う。

読書感想③「はじめての哲学的思考」(苫野一徳)

 読書感想③

哲学者で教育分野の本も多く出版されている苫野さんの「はじめての哲学的思考」。

はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

 

 「哲学」と聞いても、古代ギリシャアリストテレスプラトンといった名前と堅苦しそうというイメージしかもっていない拙者であるが、

歴史を追いながら哲学がどのように人々の生活に関わってきたか、現代を生きていく上でどのように哲学が役に立つがわかりやすく、苫野氏の意見も交えながら解説されている。

 

特に勉強になったのは「哲学=共通了解を目指す思考」。

議論が硬直したり、主張がぶつかりあうとき、友達との何気ない会話でもそうであるが、「人それぞれの価値観、考え方がある」という結論というか着地になることはままある。確かに間違いはないし、人それぞれの価値観、考え方を尊重することはとても大切であるけれども、そのままでは決して問題は解決しないし、ましてや両者の関係はそれ以上発展しない。

このような状態を打開するのが、苫野氏も協調する「共通了解志向型思考」であり、妥協せず両者が納得できる第3のアイデアを生み出すための思考である。

お互いが自分の主張に自信をもっているのだから、”妥協せず”というところが非常に難しいのだが、その際にポイントになるのが、主張の背景にある根源的な欲望(=信念)に耳を傾けること。

 

”なぜそのような主張をするのか”

 

これを突き詰めていけば、相手の主張に思いを馳せることができ、譲り合うのではなく、お互いの主張の良い部分をミックスした第3のアイデアが生み出すことができる。

らしい。

 

自分に経験がないためまだ共感はできないが納得はできる。「お互いの価値観を認める」とは相手のそのまま放置することではなく、その背景を聞き、思いを馳せることであると思いなおした。

 

巷には、「ありのままの自分でいい」というメッセージを伝える書籍があふれているが、お互いに認め合うための営みとして哲学志向がいいかも!と思える内容だった。

”入門”と名前がついている通り、哲学に対する知識が全くない人でも全然大丈夫!な内容。

読書感想②「今日の芸術」(岡本太郎)

先週読んだ本

岡本太郎「今日の芸術ー時代を創造するものは誰か」

 

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

 

 50年代に書かれたものが99年に再版されたようで、再版版を読みました。

芸術は爆発だ」と言った人、くらいの認識しかなかったのですが、、、

「芸術(特に現代アート)とは何か」が芸術に全く触れていない、わからなすぎてコンプレックスをもっている拙者のような人間にもわかりやすく記述されている、かつ岡本太郎自身の想いが正直に表現されておりとても面白かったです。

貴族や教会のためのものであった芸術作品、そこでは上手さ(=写実性)が求められ、それは”美しさ”ではないと主張します。

では”美しさ”とは何か。僕なりの解釈は”創造”です。

”創造”とはシンプルに言うと新しいことにチャレンジする営みのこと。

一見するとよくわからない(=うまくはない)絵が近代以降隆盛します。

よくわからない(=前例がない、芸術家自身の中から生まれるものが表現されている)ことこそが価値であり、多くの人は魅了されている”らしい”です。

(”らしい”としたのは、実体験がないからです。)

 

AIAIと言われる昨今、人間らしさ全開で表現された芸術作品を生でみたいな~と心から思えるようになる一冊です。

読書感想①「幸せを科学する」(大石繁宏)

6月1日より某大学の図書館で様々な本を読む生活をしています。

ふらふらーっと館内を歩きながら気になる一冊をみつけては読むだけの生活。

ある日見つけたのがこの本です。

「幸せを科学するー心理学からわかったこと」

心理学者の大石繁宏さんが2009年に出している本。

幸せを科学する―心理学からわかったこと

幸せを科学する―心理学からわかったこと

 

幸せについて、これまでの科学的な研究を綺麗にまとめた、といった感じの内容になっています。 

例えば、「幸せとお金」「幸せと病気」など、幸せと○○の関係をみるといった感じです。感覚的に納得できること(幸せを感じている人ほど長生きする…とか)が科学的実験で確認されていること、それに対する大石さんなりの考察がまとめられており、「なるほど~」「へぇ、そうなんだぁ」という面白い内容が詰まっています。

 

個人的にその中でも面白いな~と思ったのが、

国、文化によって傾向がことなること。アメリカと日本では幸せ、幸福感の定義や個人が感じる瞬間が異なる。例えば、日本人は周りに認められた時、承認されたときに幸福感を感じる、一方でアメリカ人は自分が何かを達成した時など自己実現した瞬間に幸福感を感じる傾向があるようです。そしてそれはアメリカという国家誕生の歴史や、アメリカンドリーム、他民族国家といったことと大いに関連していること。

 

すべてつながっているんですね。学校ではそれぞれを断片的に教えられましたし、自分の今この瞬間の生活と何が関係しているのか全くわからなかったですが、全部つながっていること、そのつながりをみると好奇心はどんどんつながっていくということが何となくわかってきました。

 

読書感想からは少し外れてしまいましたが、文化による価値観の違いを「幸せ、幸福感」を切り口に学んでみたい人にはお勧めです!!

 

 

お勧め映画「タクシー運転手」

「タクシー運転手」という映画を昨日みました。

2017年に韓国でNo1ヒットした本作。

光州事件を命がけで戦い、悲惨な真実を世界に知らしめることに貢献したとあるタクシー運転手のお話(実話)

韓国映画はこれまでほとんど見たことなかったですが、面白かったです。お勧めです。

 

 

こういった史実に基づいた話を見るといつも思うのが、このような作品がヒットする世の中はいいものだということ。多様な価値観がある中で、ひとつの作品を多くの人が善とする。もちろん同じ感想を抱いているとは思いませんし、そうである必要もないと思うのですが。ただ、同じ方向を向いていけるような感覚はもっていいのかと思います。


映画『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』予告編